るんですか。」
「お願いがございますので。」
「では、話してごらんなさい。」
もと公証人書記をやった朴訥《ぼくとつ》なフォーシュルヴァンは、物に動じない百姓とでも言うべき人物だった。一種の巧妙な無知というものは一つの力である。だれもそれに用心をしないで、かえってそれにいたされる。修道院に住むようになってから二年以上の間、フォーシュルヴァンは会衆の間にはなはだうまく立ちまわった。いつも一人で、庭の仕事を片付けながら、彼はただ好奇の目を見張ることばかりをしていた。行き来する面紗《かおぎぬ》をかけた女たちから遠くに離れていたので、彼はほとんど自分の前には影が動き回るのを見るだけだった。けれども注意と烱眼《けいがん》とをもって、彼はついにそれらの幽霊に肉を与え、それらの生きながらの死人をよみがえらすに至った。彼はあたかも、聾のために目が鋭くなった人のようだし、また盲目のために耳が鋭くなった人のようだった。彼は種々な鐘の音の意味を解くにつとめて、それに成功し、そしてついにその謎《なぞ》のような沈黙の修道院の内部をことごとく知ってしまった。スフィンクスはそのあらゆる秘密を彼の耳にしゃべってしまっ
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