うな様子をした。自分には何にもわからないのだ。もとより大事な娘があんなに早く「持ってゆかれた」ことを初めは苦情も言った。愛情の上からせめてもう二、三日は引きとどめても置きたかった。けれども娘を連れにきたのは、その「お祖父《じい》さん」で至って当然なことだった。彼はそのお祖父さんということをつけ加えたので、結果は至ってよかった。ジャヴェルがモンフェルメイュにきてぶっつかったのはそういう話であった。お祖父さんという一語はジャン・ヴァルジャンなる者を消滅さしたのである。
 それでもジャヴェルは、測深錘《おもり》のように二、三の質問をテナルディエの話のうちに投げ込んでみた。「そのお祖父さんというのはどんな人で、何という名前だったか?」それに対してテナルディエは無造作に答えた。「金持ちの百姓です。通行券も見ました。何でもギーヨーム・ランベールという名だったと思います。」
 ランベールというのは正直者らしい信用できそうな名前だった。ジャヴェルはパリーへ帰ってきた。
「あのジャン・ヴァルジャンはまさしく死んでいる。」と彼は自ら言った。「俺《おれ》はばかをみた。」
 彼はまたその事がらを忘れ初めた。と
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