の上そこは影になっていた。そしてそこに二つの門があった。あるいはそれを押しあけられるかも知れなかった。壁の上から菩提樹《ぼだいじゅ》の木と蔦《つた》とが見えてるところをみると、中は明らかに庭になってるらしかった。樹木にはまだ葉は出ていなかったが、少なくともそこに身を隠して夜が明けるまで潜んでることができるかも知れなかった。
時は過ぎ去ってゆく。早くしなければならなかった。
彼は大門にさわってみた、そしてすぐに、その戸は内外両方からしめ切ってあることを知った。
彼はなお多くの希望をいだいて、も一つの大きな門に近づいていった。それは恐ろしく老い朽ちていて、大きいのでいっそう弱そうで、板は腐っており、三つしかない鉄の箍《たが》は錆《さ》びきっていた。その錆び朽ちた戸を押し破ることはできそうに思えた。
ところがよく見ると、それは実は門ではなかった。肱金《ひじがね》も蝶番《ちょうつがい》も錠前もまんなかの合わせ目もなかった。鉄の箍は一方から他方へ続けざまにうちつけてあった。板の裂け目から彼は、いい加減にセメントで固めた素石や切り石をのぞき見ることができた。今から十年前まではなお、そこを通
前へ
次へ
全571ページ中327ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング