歩いてはいなかった。コゼットの足はジャン・ヴァルジャンの歩みをおくらしていた。
 彼はまたコゼットを抱き上げた。コゼットは彼の肩の上に頭をつけて、一言も口をきかなかった。
 彼は時々ふり返ってはながめた。やはり注意して街路の薄暗い方をたどった。街路は後ろにまっすぐに見えていた。最初二、三度ふり返った時には何にも見えず、ただひっそりとしていたので、少し安心して歩行を続けた。それからまたしばらくしてふり返ってみると、今自分が通ってきたばかりの街路に、遠くやみの中に何か動いてるものが目についたような気がした。
 彼はただ前方へ、歩いて行ったというよりむしろ突進して行った。ある横丁を見付けて、そこから逃げ出し、も一度あとをくらますつもりだった。
 彼は一つの壁に行き当たった。
 けれどもその壁は行き止まりにはなっていなかった。それは、今彼が歩いてきた街路に続いてる横通りの壁だった。
 そこでまた彼は心を決めなければならなかった、右へ行くか、左へ行くかに。
 彼は右の方をながめた。小路は小屋や物置きなどの建物の間に細長く続いていて、その向こうは行き止まりになっていた。その袋町の底もはっきり見えて
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