って、そして物語の筆を続けよう。
 さてジャン・ヴァルジャンは、すぐにオピタル大通りを離れて、裏通りのうちに進み入り、できるだけ曲がりくねった方向を取り、追跡されていはしないかを確かめるために、時々急にもときた方へ戻ったりした。
 そのやり方は、狩り立てられた鹿《しか》がよくやることである。足跡が残るような場所では、種々の利益があるがなかんずく、逆行路によって狩人《かりゅうど》や犬を欺くの利益がある。猟犬をもってする狩りの方で逆逃げ[#「逆逃げ」に傍点]と称するところのものがすなわちそれである。
 ちょうど満月の夜であった。しかしジャン・ヴァルジャンはそのために少しも困まりはしなかった。まだ地平線に近い月は、影と光との大きな帯で街路を二つにくぎっていた。ジャン・ヴァルジャンは人家や壁に沿って影のうちに身を潜め、光の方を透かし見ることができた。影の方を見ることができなかったことを、彼はあまり念頭に置いていなかったらしい。ポリヴォー街に続く寂しい小路を進みながら、確かにだれも後ろからついて来る者はないと思った。
 コゼットは何も尋ねずに歩いていた。世に出て最初からの六年間の苦しみは、彼女の
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