にしたのである。それには太陽がのぼって地をかわかさなければならなかった。しかし太陽の出るのは遅かった。こんどはアウステルリッツのようにすぐにはゆかなかった。最初の大砲の一発が響いた時、イギリスの将軍コルヴィルは時計をながめて、十一時三十五分であることを確かめた。
 戦闘は猛烈に初まった。おそらく皇帝が望んでたより以上猛烈に、ウーゴモンに対するフランス軍の左翼によって開始された。同時にナポレオンは、ラ・エー・サントに向かってキオー旅団を投げつけながら敵の中央を攻撃し、ネーはパプロットによってるイギリス軍の左翼に向かってフランス軍の右翼を突進さした。
 ウーゴモンに対する攻撃は多少|佯撃《ようげき》であった。ウェリントンをそこに引きつけて左翼に牽制《けんせい》せんとするのが、その計画であった。もしイギリスの近衛の四個中隊と勇敢なベルギーのペルポンシェル師団とが頑強《がんきょう》に陣地を維持し得なかったならば、その計画は成功していたであろう。がウェリントンはそこに赴援《ふえん》せずして、全援兵としてただ近衛の他の四個中隊とブルンスウィックの一隊とだけをつかわすに止めておくことができたのである
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