いたかあありませんよ。どこにいるかぐらいは知っていて、時々は会いにも行きましょうし、またあの児も、育て親があって自分を見ていてくれてるということを知るというわけです。世間にはずいぶん思いがけないことも起こりますからね。私は旦那《だんな》の名前さえ存じませんし、あれを連れてゆかれますとしたら、あああのアルーエットはいったいどこへ行ったんだろうと、私はただ嘆息するほかはありませんからね。何かちょっとした書き物でも、まあいわば通行券なりと、それを拝見して置きたいと思いますが。」
男はいわば相手の本心の底までも貫くような目つきでじっと彼をながめながら、おごそかな確乎《かっこ》たる調子で答えた。
「テナルディエ君、パリーから五里くらい離れるのに通行券を持ってくる者はいません。コゼットを連れて行くと言ったら連れてゆくだけのことです、それだけです。私の名前も、私の住所も、またコゼットがどこへ行くかも、君に知らせる必要はありません。私はあの児を生涯《しょうがい》再び君に会わせまいというつもりです。私はあの児の繩《なわ》を解いてやって、逃がそうというのです。それでどうですか。承知ですかそれとも不承知で
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