だ一度で四百フラン余りの薬代も払ったことがありますが、神様のためと思えば少しぐらいはしてやらなければなりません。父親も母親もありませんので、私が手一つで育て上げました。私とてあの児に食わせ、また自分で食うだけのパンは持っております。実際私はあの児を大事にしています。まあ人情が出てきたんですな。私はばか者で、一向理屈はわかりません。がただかわいいんです。家内は活発な方ですが、やはりかわいがっています。ごらんのとおり、自分たちの児のようにしています。あれが家の中でしゃべくってるのが楽しみでして。」
男はなお彼をじっとながめていた。彼は続けた。
「失礼ではございますが旦那、通りがかりの人に自分の児をこうして渡してしまう者もありますまい。私の申すところも、もっともでございましょう。そこで、旦那はお金持ちで、お見受けしたところごくりっぱな方で、それがあの児のためになるかどうかなどと申すのではありませんが、それでもよく事情はわかっていませんではね。おわかりでもありましょうが、まああれをやるとしまして、かりに私情を犠牲にしますとしてもですな、あれがどこへ行くかぐらいは知りたいではありませんか。見失
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