すか。」
悪魔や妖鬼《ようき》などが何かのしるしで自分よりまさった神のいることを知るように、テナルディエは相手がなかなか手ごわいことをさとった。それはほとんど直覚だった。彼はそれを明確|怜悧《れいり》な機敏さでさとった。前夜、馬方らと酒をのみながら、煙草《たばこ》をふかしながら、卑猥《ひわい》な歌を歌いながら、彼は猫のように覘《うかが》い数学家のように研究して、始終その見なれぬ男を観察していたのである。彼は同時に自分のためと楽しみと本能とから男を窺《うかが》い、あたかも金で頼まれたかのように偵察《ていさつ》していたのである。そしてその黄色い上衣の男の一挙手一投足はことごとく彼の目をのがれなかった。男がコゼットに対する興味を明らかに示さない前から、テナルディエは既にそのことを見破っていた。その老人の奥深い目つきが絶えずコゼットの方へ向けらるるのを見て取っていた。何ゆえにそう興味を持つのだろう? いったい何者だろう? 金入れにはいっぱい金を持ちながら、何ゆえにああ見すぼらしい服装《なり》をしているのだろう? そういう問題を彼は自ら提出しながら、解決ができず、いら立っていた。彼はそのことを
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