ゼットの寝てる物置きのそばに一つの扉《とびら》が開いたままになっていて、そこからかなり広い薄暗い室《へや》が見えていた。男はそこにはいって行った。奥の方に、一つのガラス戸を通して、一対の小さなまっ白な寝床が見えていた。アゼルマとエポニーヌとの寝床であった。その向こうに柳の枝でできた帷《とばり》なしの揺籃《ゆりかご》が半ば見えていた。中には、その晩、始終泣き通しにしていた小さい男の児が眠っていた。
男はその室がテナルディエ夫婦の寝てる室に続いていることを察した。そして引き返そうとした時、彼の目はそこの暖炉の上に落ちた。それはよく宿屋に見受けられる大きなやつで、火がある時でもきまってごくわずかであって、見ても寒そうに思われるものだった。今その暖炉には、火もなければ灰さえもなかった。けれども男の注意を引くものがそこにあった。それはかわいらしいかっこうの大小二つの子供靴だった。クリスマスの晩暖炉の中に履物《はきもの》を置いておいて、親切なお爺《じい》さんがりっぱな贈物を持ってきてくれるのを暗やみのうちに待つという、あのおもしろい古くからの子供の習慣を、彼はその時思い出した。エポニーヌとアゼル
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