下を通って階段の所へ達した。そこで、子供の息のようなきわめて静かな小さな音を耳にした。その音に引かれて彼は、階段の下に作られてる――というよりもむしろ階段でできてる一種の三角形の押し入れみたいな所へやってきた。それは階段の下のすき間にすぎなかった。そこに、古かごや古びんなどの間に、ほこりや蜘蛛《くも》の巣などの中に、一つの寝床があった。もっとも寝床と言っても、穴があいて中の藁《わら》が見えている蒲団《ふとん》と、下まで見通せるほど穴だらけの掛け物とにすぎなかった。敷き布もなかった。そして、それだけのものが床石《ゆかいし》の上にじかに置かれていた。その寝床の中に、コゼットが眠っていた。
 男はそこに近づいて、彼女をながめた。
 コゼットは深く眠っていた。着物もきたままだった。冬には、なるべく寒くないように着物もぬがないで眠るのであった。
 彼女はしっかと人形を抱きしめていた。人形の大きく開かれた目はやみの中に光っていた。時々彼女は目をさましかかってるように大きなため息をもらしては、ほとんど痙攣的《けいれんてき》に人形を腕に抱きしめた。寝床のそばにはただ片方の木靴《きぐつ》があった。
 コ
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