に最も憎むべき者のように思った。けれども自分をおさえなければならなかった。彼女は何事にも夫をまねようとしていたので、仮面をかぶることにはよくなれていたが、それでもその時の感情にはほとんどたえ難いものがあった。彼女は急いで自分の娘たちを寝床に追いやった。それからコゼットをも寝かそうとその黄色い着物の男に許可[#「許可」に傍点]を願った。今日は大変疲れていますから[#「今日は大変疲れていますから」に傍点]などと母親らしい様子でつけ加えた。でコゼットは、両腕にカトリーヌを抱いて寝に行った。
上さんは時々、室《へや》の向こうの端の亭主の所へ行った。心を安めるために[#「心を安めるために」に傍点]と自ら言っていた。彼女は亭主とちょっと言葉をかわした。それは大声に言えないだけいっそういら立ったものだった。
「あの糞爺《くそじじい》め! どういう腹なんだろう。ここにやってきて私どもの邪魔をするなんて! あの小さな餓鬼を遊ばしたがったり、人形をやったり、それも、四十スーの値打ちもない犬女郎《いぬめろう》に四十フランもする人形をやったりしてさ! も少ししたら、ベリーの御妃《おきさき》にでも言うように、
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