「どうして遊ぶ?」
「勝手なことをして。何でもさしてくれます。けれど私は玩具《おもちゃ》をあまり持っていないの。ポニーヌとゼルマは私に人形を貸してくれません。私はただ鉛の小さな剣を一つ持ってるきりなの、これくらいの長さの。」
 子供は自分の小指を出して見せた。
「切れないんだろう。」
「切れるわ、」と子供は言った、「菜っ葉だの蠅《はえ》の頭なんか切れるわ。」
 二人は村に達した。コゼットは見知らぬ男を案内して通りを歩いていった。彼らはパン屋の前を通った。けれどもコゼットは買ってゆくべきパンのことを忘れていた。男はもういろいろなことを尋ねるのをやめて、陰鬱《いんうつ》に黙り込んでいた。それでも教会堂の所を通りすぎて、露天の店が並んでるのを見ると、コゼットに尋ねた。
「おや、市場だね。」
「いいえ、クリスマスよ。」
 彼らが宿屋に近づいた時、コゼットはおずおずと男の腕につかまった。
「小父《おじ》さん。」
「なんだい?」
「家の近くにきました。」
「それで?」
「これから私に桶《おけ》を持たして下さいな。」
「なぜ?」
「ほかの人に桶を持ってもらってるのが見つかると、お上さんに打たれるか
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