をしてたんだ。このお化けめ、おゆきったら!」
 上さんはちらと外をのぞいて、心を奪われて立ってるコゼットの姿を見つけたのだった。
 コゼットは桶《おけ》を持って、できるだけ大急ぎで逃げ出した。

     五 少女ただ一人

 テナルディエの宿屋は村のうちで教会堂に近い方の部分にあったので、コゼットはシェルに面した方の森の中の泉に水をくみに行かなければならなかった。
 彼女はもう他の店は一軒ものぞいて見なかった。そしてブーランゼーの小路から教会堂の近くまで行く間は、露店の燈火《あかり》が道を照らしていたが、やがて一番終わりの店の燈火も見えなくなってしまった。あわれな娘は暗やみのうちにあって、その中をつき進んだ。ある一種の恐怖にとらえられていたので、歩きながら桶《おけ》の柄を力限り動かしていた。それから出る音が彼女の道連れであった。
 進めば進むほどやみはますます濃くなっていった。道には一人の人もいなかった。がただ一人の女に出会った。その女は彼女の通りすぎるのを見てふり返り、立ち止まって口の中でつぶやいた。「いったいあの子はどこへ行くんだろう? まるで化け物のようだが。」そのうちに女はそ
前へ 次へ
全571ページ中187ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング