と富貴と幸福とであって、陰惨な冷たい辛苦のうちに深く閉ざされていたこの不幸なる少女にとっては、夢のような光彩のうちに浮かんで見えた。コゼットは子供らしい無邪気なまた悲しい知恵をしぼって、自分と人形とを距《へだ》てている深淵を測ってみた。女王かまた少なくとも王女でなければあのような「もの」を手にすることはできまいと思った。彼女はその薔薇色《ばらいろ》のきれいな着物やそのなめらかな美しい髪毛をながめた、そして考えた、「あの人形はどんなにか仕合わせだろう!」彼女はその幻のような露店から目を離すことができなかった。見れば見るほどそれに眩惑《げんわく》された。あたかも楽園を見るような気がした。その大きい人形の後ろには幾つも他の人形があって、それが妖精《ようせい》や精霊のように思われた。店の奥を行ききしている商人は、何だか天の父ででもあるかのように思われた。
 そして心を奪われてるうちに、彼女はすべてを忘れ、言いつかった用事までも忘れてしまっていた。と突然、テナルディエの上さんの荒々しい声が彼女を現実の世界に呼びさました。「おや、ばか娘、まだ行かなかったのか。待っといで、私が出ていくから。そこで何
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