れがコゼットであることに気づいた。「まあ、」と女は言った、「雲雀娘《ひばりむすめ》だったのか!」
 そのようにしてコゼットは、シェルの方に面したモンフェルメイュの村はずれの曲がりくねった人気《ひとけ》のない小路の入り乱れた中を通って行った。そして道の両側に人家やまたは壁だけでもある間は、かなり元気に進んでいった。時々彼女は、鎧戸《よろいど》のすき間から蝋燭《ろうそく》の光がもれるのを見た。それは光明であり生命であって、そこには人がいたのである。彼女はそれに安堵《あんど》することができた。けれども、先へ行くに従って彼女の歩みはほとんど機械的に遅くなっていった。最後の人家の角を通り過ぎた時、コゼットは立ち止まった。最後の露店の所からそこまで行くのも、既に困難なことだったが、今やその最後の人家から先へ行くことは、ほとんど不可能だった。彼女は桶《おけ》を地面に置き、髪の中に手を差し入れて、静かに頭をかき初めた。怖《お》じ恐れて決断に迷ってる子供によく見る態度である。もうそこはモンフェルメイュの村ではなく、野の中だった。暗い寂しいひろがりが彼女の前にあった。彼女はその暗黒を絶望の目で見やった。そ
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