ルディエの身振りのうちには何となく直線的なものがあって、きっぱりと口をきく時には軍人らしい趣となり、十字を切る時には神学校生徒らしい趣となった。話が上手で、学者と思われることもあった。けれども、小学校の先生は彼の「言葉尻《ことばじり》の訛《なま》り」に気がついた。彼は旅客への勘定書を書くことに妙を得ていた。けれども、なれた目で見ると往々つづりの誤りが見い出された。彼は狡猾《こうかつ》で、強欲で、なまけ者で、しかも利口であった。彼は下女どもをも軽蔑しなかった。そのために女房の方では下女を置かなくなった。この大女は至って嫉妬《しっと》深かった。彼女には、そのやせた黄色い小男がだれからでも惚《ほ》れられそうに思えたのである。
テナルディエは特に瞞着《まんちゃく》者で落ち着いた男であって、まあ穏やかな方の悪党であった。けれどもそれは最も性質《たち》のよくないやつである、なぜなら偽善が交じってくるからである。
かといって、テナルディエとても女房のように怒気を現わす場合がないわけではない。ただそれはきわめてまれであった。そしてそういう時には、彼は人間全体を憎んでるようだった。自分のうちに憎悪《
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