られていたのである。王国および軍国の礼儀、騒然たる儀礼の交換、礼式の信号、海上と砲台との儀式、毎日すべての要塞《ようさい》および軍艦から迎えらるる日の出と日没、港の開始と閉塞、その他種々のものが。文明社会は、各地において毎二十四時間ごとに、無益な大砲を十五万発も発射している。一発を六フランとすれば、一日に九十万フランが、一年に三億フランが、煙となるわけである。そしてそれもただ一部の項目だけでそうである。その間に一方では、貧しい人々は飢えている。
 一八二三年は、復古政府が「スペイン戦争時代」と呼んだ年である。
 その戦争一つのうちには、多くの事変が含まっており、多くの特殊な事がらが混入していた。ブールボン家にとって重大な家系問題。フランス王家がマドリッドの王家を援助し保護して、いわゆる本家の勤めを尽したこと。北方の諸政府に隷属《れいぞく》服従していっそう煩雑《はんざつ》をきたした、フランスの国民的伝統への表面上の復帰。アングーレーム公が、自由派の空想的な虐政と争っていた宗教裁判所の実際的な古来からの虐政を、いつもの穏和な様子にも似ず堂々たる態度をもって抑制して、自由派の諸新聞からアンデ
前へ 次へ
全571ページ中145ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング