飲食店の主人テナルディエとであった。テナルディエはだれとでも交わるのをきらわないで、ブーラトリュエルとも知り合いだった。
「あの男は徒刑場にいたことがあるはずだ。」とテナルディエは言った。「だからいったいどんな奴《やつ》がやってきたのか、どんな奴がやって来るか、わかったもんじゃない。」
 ある晩小学校の先生が言うには、昔だったらブーラトリュエルが森の中で何をするつもりであったか官憲の方で調査したはずである、そしてあいつも何とかしゃべらなければならなかっただろう、必要によっては拷問にかけられることもあったろう、で結局ブーラトリュエルはたとえば水責めの拷問にはたえきれなくて白状したかも知れない。するとテナルディエは言った、「ひとつ酒責めにしてみましょうや。」
 彼らは手段を講じて、その老道路工夫に酒を飲ました。しかしブーラトリュエルは酒をたくさん飲んで、口はあまりきかなかった。彼は大酒家の喉《のど》と裁判官の用心さとを、いかにも巧みにまたみごとな割合にあわせ用いた。けれどもしつこく問いただして、彼の口からもれた曖昧《あいまい》な二、三の言葉をいっしょに繋《つな》ぎ合わしてみて、結局テナルデ
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