は心が安まらなかった。しかるにブーラトリュエルはそういうふうに人に出会うことを非常にいやがってるらしかった。明らかに彼は人に見られるのを避けようとしていた、そして彼の仕業のうちに何か秘密があるのは明らかだった。
村ではいろいろなことが言われた。「きっと悪魔が現われたに違いない。ブーラトリュエルはそれを見てさがしているのだ。なるほどあの男なら魔王の金をまき上げるくらいのことはやりかねない。」ヴォルテール流の者らはつけ加えた。「ブーラトリュエルが悪魔を捕えるか、悪魔がブーラトリュエルを捕えるかだ。」年老いた女たちは幾度も十字を切った。
そのうちにブーラトリュエルは森の中の仕事をやめてしまった。彼は道路工夫の仕事をまた几帳面《きちょうめん》にやり出した。人々の噂《うわさ》も他のことに向いていった。
けれども中にはまだ好奇心をいだいていて、おそらくそれには、伝説の荒唐無稽《こうとうむけい》な宝物ではなく、悪魔の手形よりはもっとまじめな、もっと実際的な獲物があって、道路工夫はきっとその秘密を半ば嗅《か》ぎ出したのだろう、と思ってる者もあった。そして最も「気をやんでいた」者は、小学校の先生と
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