らなかったので、政府の方でガンニーからランニーまでの横道の道路工夫として安い給料で使っていた。
ブーラトリュエルはその地方の人々から蔑視《べっし》されていた。彼はばか丁寧で、あまり身を卑下していて、だれにでもすぐに帽子を取っておじぎをし、憲兵らの前では震えながら愛想笑いをし、たぶん盗賊団の仲間にはいっているのだろうと人から言われており、夕方などは森陰にひそんで人を待伏せしていると疑われていた。ただ人間らしい取りえとしては、酒飲みであるということくらいであった。
人々の目についたのは次のようなことであった。
近頃いつもブーラトリュエルは、道路に砂利を敷いて手入れをする仕事をごく早めに切り上げ、鶴嘴《つるはし》を持って森の中にはいってゆくのだった。夕方など、最も人けの少ない伐木地や最も寂寞《せきばく》たる茂みの中などで、時々穴を掘ったりして何かさがし回ってるような彼に、出会うことがよくあった。そこを通りかかった女たちは、初めそれをベルゼブル([#ここから割り注]訳者注 新約聖書にある悪鬼の頭[#ここで割り注終わり])だとさえ思ったが、よく見るとブーラトリュエルであった。それでも彼女ら
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