ィエと先生とは次のことを探り得たと思った。
ブーラトリュエルはある朝、夜の明け方に、仕事に出かけて行くと、森の片すみの藪《やぶ》の下にくわと鶴嘴《つるはし》とを見い出して驚いたらしい。それはちょうど隠されたようにして[#「隠されたようにして」に傍点]置いてあった。けれども彼は、それをたぶん水くみ爺さんのシー・フールのくわと鶴嘴とであろうと思って、別に気にも留めなかったらしい。けれどもその日の夕方、彼はある大木の後ろに身を隠して先方の目をのがれながら、「全くその辺の者ではないが彼ブーラトリュエルがよく知ってる一人の男」が、道路から森の最も深い方へはいってゆくのを見たらしい。テナルディエはそれを翻訳して「徒刑場の仲間の一人[#「徒刑場の仲間の一人」に傍点]」だとした。ブーラトリュエルは頑固《がんこ》にその名前を言うことを拒んだのである。その男は、大きな箱かあるいは小さな鞄《かばん》みたような何か四角な包みを持っていた。ブーラトリュエルは驚いた。それでも「その男」の跡をつけてみようという考えを起こしはしたが、それも七、八分過ぎてからであったらしい。彼は機を失していた。男は既に木立ちの茂みへ
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