はあなたに対して丁寧であらねばならないはずです。あなたは私の意見を論ぜらるる。で私はあなたの推論を駁《はく》するに止むるが至当です。あなたの財宝や享楽などは私があなたを説破するための利点です。しかしそんなことについては何も言わない方が作法でしょう。私は誓ってそれらの利点をもう用いないことにしましょう。」
「それはありがたいことです。」と司教は言った。
 G《ゼー》は更に言った。
「あなたが求められた説明に帰りましょう。ところでどういうことでしたか。何をあなたは言ってたのですか。九三年は苛酷であったと?」
「苛酷、そうです。」と司教は言った。「断頭台に向かって拍手をしたマラーをどう考えますか。」
「では新教迫害に関して讃歌《テデオム》を歌ったボシュエについて何と考えます?」
 答えは冷酷だった、しかも刃の切れ先をもってするごとく厳《きび》しく要所を衝《つ》いた。司教はぞっとした。何の抗論もちょっと彼の心に浮かばなかった。しかし彼はボシュエに対するかくのごとき言い方に不快の念をいだいた。すぐれたる人も皆その崇拝者を有するものである。そしてしばしば論理上にもその人に対する尊敬を欠かれると漠然
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