く私に知恵を授けんつもりでこられたあなた自身の、あなたの真実根本の価値について、それは私に何も知らせないのである。今私が話してる相手はだれであるか? あなたはだれであるか?」
 司教は頭をたれて答えた、「私は虫けらにすぎません[#「私は虫けらにすぎません」に傍点]。」
「四輪馬車に乗った地上の虫けら!」と民約議会員はつぶやいた。
 こんど傲然《ごうぜん》たるは民約議会員であって、謙譲なるは司教であった。
 司教は穏やかに言った。
「それとまあしておきましょう。しかし私に説明していただきたいものです。あの木立ちの向こう二歩の所にある私の四輪馬車が、私が金曜日に食する田鶴《ばん》と珍膳とが、私の邸宅や従僕らが、憐憫《れんびん》は徳でなく、寛容は義務でなく、九三年は苛酷《かこく》なものでなかった、ということを何において証明するでしょうか。」
 民約議会員は手を額《ひたい》にやった、あたかもある雲をそこから払いのけんがためのように。
「あなたにお答えする前に、」と彼は言った、「私はお許しを願っておきたい。私はただ今間違ったことをしたようです。あなたは私の家にきておられ、あなたは私の客人です。私
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