混乱したる喜悦の。」と司教は言った。
「錯乱したる喜悦とも言えるでしょう。そして今日、一八一四年と称するあの痛ましい過去の復帰の後に、喜びは消え失せてしまったのです。不幸にも事業は不完全であった。私もそれは認める。われわれは事実のうちにおいて旧制を打破したが、思想のうちにおいてそれをまったく根絶することはできなかったのです。弊風を破る、それだけでは足りない、風潮を変更しなければならない。風車はもはや無くなったが、風はなお残っているのです。」
「あなた方は打破せられた。打破することが有益であることもある。しかし私は憤怒の絡《から》みついた打破には信を置きません。」
「正義にはその憤怒があるものです、そして、正義の憤怒は進歩の一要素です。とまれ何と言われようとも、フランス大革命はキリスト降誕以来、人類の最も力強い一歩です。不完全ではあったでしょう。しかし荘厳なものでした。それは社会上の卑賤《ひせん》な者を解放した。人の精神をやわらげ、それを静め慰め光明を与えた。地上に文明の波を流れさした。りっぱな事業であった。フランス大革命は実に人類を聖《きよ》めたのです。」
 司教は自らつぶやくことを禁
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