ものがあった。ただ両脚のみが動かなかった。そこから暗黒が彼を捕えていた。両足は既に死して冷ややかであったが、頭脳はなお生命のすべての力をもって生きており、光明のさなかにあるように見えた。Gはこの危急な場合において、上半は肉体で下部は大理石であったという東方の物語の王にも似寄っていた。
そこに石があったので、司教は腰を掛けた。対話の初まりはまったくだしぬけ[#「だしぬけ」に傍点]であった。
「私はあなたを祝します。」と司教はまるで詰責するような調子で言った。「あなたは少なくとも国王の死刑には賛成しなかったのですから。」
民約議会員はこの「少なくとも」という言葉のうちに隠されている言外の苦々《にがにが》しい意味を見て取ったようではなかった。彼は答えた。微笑は彼の顔から消えてしまっていた。
「あまり私を祝して下さるな。私は暴君の終滅に賛成したのです。」
それは酷《きび》しい調子に返されたる厳粛な調子であった。
「それはどういう意味です。」と司教は聞き返した。
「人間は一つの暴君を持っているというのです。すなわち無知を指《さ》すのです。私はその暴君の終滅に賛成しました。その暴君は王位を生
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