にふさわしい卑下《ひげ》とも思えるものがそこにあった。
 司教は元来好奇心をもって侮辱に隣せるものとしてそれを慎んでいたのであるけれども、今や一種の注意をもってこの民約議会員を観察せざるを得なかった。それは同情から出たものではなくて、おそらく他の人に対してなら彼は自ら良心の非難を感じたであろう。しかし民約議会員たる者は、法の外にある、慈悲の法の外にさえある、という印象を彼に与えたのである。
 ほとんど真っ直な体躯《たいく》と震える声とを持っているこの冷静なG《ゼー》は、生理学者を驚かしむる堂々たる八十年配の老人であった。革命は時代にふさわしいかかる人々の多くを出した。この老人のうちには堅忍|不撓《ふとう》な人物を思わせるものがあった。かく臨終に近づいていながら、彼は健康の外見を保っていた。その明らかな目つき、しっかりした語調、両肩の頑健《がんけん》な動き、それらのうちには死と不調和なものがあった。マホメット教の墳墓の天使なるアズラエルも、家を間違えたと思って道を引き返したかも知れない。G《ゼー》はただ自ら欲したが故に死なんとしているもののようであった。彼の臨終の苦痛のうちには何か自由な
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