ついては、おんもとに御滞在もしばしのことと存じますので、私へおたよりのひまもございますまい。ただ、いつもお健やかに、あなたのお望みのとおりによく務められ、また常に私を愛して下されんこと、それのみが私の望みであります。あなたを通してお送り下さいましたあの方の記念の品、到着いたしました。たいへんにうれしく存ぜられます。私の健康はさして悪い方ではありませぬ、けれども日に日にやせて参ります。それでは紙もつきましたのでこれで筆をとめます。
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[#地から1字上げ]かしこ。
[#地から3字上げ]バティスティーヌ
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 追白――御令弟夫人には若き御一家とともにいつもこの地におられます。御子息はまことに愛くるしくていられます。御存じでもありましょうが、やがて五歳になられます。昨日、膝当《ひざあて》をした馬の通るのを見て言われるのです。「あの馬は膝をどうしたの。」いかにもかわいらしいお子様です。その小さい弟御は古い箒《ほうき》を馬車にして室の内を引きずりながら、「ハイ、ハイ」と申されています。
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 この手紙によって見るも、これらの二人の
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