なかった。
少年はまた初めた。
「私のお金を、小父さん。」
ジャン・ヴァルジャンの目はじっと地面を見つめていた。
「私のお金をさ!」と少年は叫んだ。「私の白いお金を! 私の銀貨をさ!」
ジャン・ヴァルジャンはそれを少しも耳にしなかったかのようであった。少年はその上着のえりをとらえて、彼を揺すった。同時にまた、自分の貨幣の上にのせられてる鉄鋲を打った大きなその靴を動かそうと努めた。
「私のお金をよう! 四十スー銀貨を!」
少年は泣いていた。ジャン・ヴァルジャンは頭をあげた。でも彼はなおすわっていた。彼の目付きは乱れていた。彼は驚いたように少年を見つめ、それから杖の方へ手を伸べて、恐ろしい声で叫んだ。
「だれだ、貴様は?」
「私よ、小父さん。」と少年は答えた。「プティー・ジェルヴェーよ。私ですよ、私ですよ。どうか四十スー銀貨を返して下さいな。ねえ小父さん、足をどけて下さいよう!」
それから、小さくはあったが彼は苛《い》ら立ってきて、ほとんど脅かすような様子になった。
「さあ、足をどけてくれますか。足をどけて、さあ!」
「ああまだ貴様いたのか!」とジャン・ヴァルジャンは言った。そし
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