てやはり貨幣の上をふまえながら突然すっくと立ち上がって、言い足した。「失《う》せやがれ!」
少年はびっくりして彼をながめた。そして頭から足の先まで震え上がり、ちょっと惘然《ぼうぜん》としていた後、ふり返りもせず声も立てず一目散に逃げ出した。
けれどしばらく行くと息が続かないで彼は立ち止まった。そしてジャン・ヴァルジャンは、ぼんやり何か考え込んでいるうちにも少年のすすりなく声を聞いた。
やがて少年の姿は見えなくなった。
太陽は没していた。
ジャン・ヴァルジャンのまわりには影が迫ってきた。彼はその日何も食べていなかった。少し熱もあったらしい。
彼は立ちつくしていた、少年が逃げ出した時のままの姿勢だった。長い不規則な間を置いては呼吸が胸をふくらした。彼の目は十一、二歩前のところに据えられて、草の中に落ちている青い陶器の古い破片《かけら》の形を注意深く見きわめているようだった。と突然彼は身震いをした。夕の冷気を感じたのだった。
彼はまた額《ひたい》に帽を深く引き下げ、機械的に手探りで上着の前を合わせボタンをはめ、一歩前に出て、地面から杖を取り上げるために身をかがめた。
その時、
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