ー渡した。彼は不足を言った。貴様にはそれでたくさんだ[#「貴様にはそれでたくさんだ」に傍点]と答えられた。彼はしつこく言い張った。主人は彼を正面《まとも》にじっと見つめて、そして言った。監獄に気をつけろ[#「監獄に気をつけろ」に傍点]!
そこでまた彼は盗まれたのだと考えた。
社会は、国家は、彼の積立金を減らしながら彼を大きく盗んだ。今や彼を小さく盗むのは個人であった。
釈放は解放ではない。人は徒刑場から出る、しかし処刑からは出られない。
グラスで彼に起こったことは上の通りである。ディーニュで彼がいかなるふうに遇せられたかは前に述べたところである。
十 目をさました男
大会堂の大時計が午前二時を打った時に、ジャン・ヴァルジャンは目をさました。
彼が目をさましたのは、寝床があまり良すぎたからだった。やがて二十年にもなろうという間、彼は寝床に寝たことがなかったのである。そして彼は着物を脱いではいなかったけれども、その感じはきわめて新奇なもので眠りを乱したのだった。
彼はそれまで四時間余り眠ったのだった。疲れは消えていた。彼は休息に多くの時間を与えることにはなれてい
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