た。食卓には快活淡泊な顔つきをした四十かっこうの男がすわっていて、膝《ひざ》の上に小さな子供が飛びはねていた。そのそばに年若い女がも一人の小児に乳をやっていた。父は笑っており、子供は笑っており、母はほほえんでいた。
 男はこの穏和なやさしい光景の前にしばらくうっとりと立っていた。その心のうちにはどんな考えが浮かんだか? それを言い得るのはただ彼のみであろう。がたぶん彼は、その楽しい家は自分を歓待してくれるかも知れないと思ったろう、そしてかくも幸福に満ちた家からはおそらく少しの憐憫《れんびん》を得らるるかも知れないと。
 彼はきわめて軽く窓ガラスを一つたたいた。
 家の人にはそれが聞こえなかった。
 彼は再びたたいた。
 彼は女がこういうのをきいた。「あなた、だれかきたようですよ。」
「そうじゃないよ。」と夫は答えた。
 彼は三度たたいた。
 夫は立ち上がって、ランプを取り、そして戸の方へ行って開いた。
 それは半ば農夫らしく半ば職人らしい背の高い男であった。左の肩まで届いている大きな皮の前掛けを掛けていて、その上に帯をしめてポケットのようになった所に、槌《つち》や赤いハンケチや火薬入れ
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