所に、呼び鐘につけてある鉄の鎖が下がっていた。彼はその鐘を鳴らした。
 潜《くぐ》り戸《ど》が開いた。
「門番さん、」と言って彼は丁寧に帽子をぬいだ、「私を中に入れて今晩だけ泊めて下さるわけにいきませんか。」
 中から答える声がした。
「監獄は宿屋じゃない。捕縛されるがいい。そしたら入れてもらえるんだ。」
 潜り戸はまた閉じられた。
 彼は庭のたくさんある小さな通りにはいった。ただ生籬《いけがき》で囲まれたばかりの庭もあって、通りがいかにもさわやかであった。その庭や生籬のうちに、彼の目にとまった小さな一軒の二階家があって、窓には燈火《あかり》がさしていた。彼は居酒屋でしたようにその窓からのぞいてみた。それは石灰で白く塗った大きな室であって、型付き更紗《さらさ》の布が掛かっている寝台が一つと、片すみに揺籃《ゆりかご》が一つと、数脚の木製の椅子《いす》と、壁にかけてある二連発銃が一つあった。室のまん中の食卓には食事が出されていた。銅のランプが粗末な白布のテーブル掛けを照らし、錫《すず》のびんは銀のように輝いて酒がいっぱいはいっており、褐色《かっしょく》のスープ壺《つぼ》からは湯気が立ってい
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