魚屋はそれに答えもしないで足を早めた。その魚屋は約三十分ばかり前には、ジャカン・ラバールを取巻いた群衆のうちにいた、そして彼自身、クロア・ド・コルバの客たちにその午前の気味悪い出会いを話してきかしたのだった。で今彼は自分の席からひそかに居酒屋の亭主に合い図をした。亭主は彼の所へ行った。二人は低い声で少し話しあった。あの男はまた考えに沈んでいた。
亭主は炉の所に帰ってきて、突然男の肩に手を置いた、そして言った。
「お前さんはここから出て行ってもらおう。」
男はふり返って、そして穏かに答えた。
「ああ、あなたも知っているんですね。」
「そうだ。」
「私はほかの一軒の宿屋からも追い出された。」
「そしてこの宿屋からも追い出されるんだ。」
「では、どこへ行けと言うんです。」
「他の所へ行くがいい。」
男は杖と背嚢とを取って、出て行った。
彼が出てきた時、クロア・ド・コルバからあとをつけてきて、今も彼の出て来るのを待っていたらしい数人の子供たちが、彼に石を投げた。彼は憤って引き返し、杖で子供たちをおどかした。子供たちは鳥の飛びたつように散ってしまった。
男は監獄の前を通りかかった。門の
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