にしておいた。
 それから数日後《すうじつご》のこと、クリストフは自分のまわりに椅子《いす》をまるくならべて芝居《しばい》へいった時のきれぎれな思《おも》い出《で》をつなぎあわせて作った音楽劇《おんがくげき》を演《えん》じていた。まじめくさった様子で、芝居《しばい》で見た通り、三拍子曲《ミニュエット》の節《ふし》にあわせて、テーブルの上《うえ》にかかっているベートーヴェンの肖像《しょうぞう》に向かい、ダンスの足どりや敬礼《けいれい》をやっていた。そして爪先《つまさき》でぐるっとまわって、ふりむくと、半開《はんびら》きの扉《ドア》の間《あいだ》から、こちらを見ている祖父《そふ》の顔が見えた。祖父に笑われてるような気《き》がした。たいへんきまりが悪《わる》くなって、ぴたりと遊《あそ》びを止《や》めてしまった。そして窓のところへ走っていき、ガラスに顔を押《お》しあてて、何かを夢中《むちゅう》で眺《なが》めてるような風《ふう》をした。しかし、祖父《そふ》は何ともいわないで、彼の方へやって来て抱《だ》いてくれた。クリストフには祖父《そふ》が満足《まんぞく》しているのがよくわかった。彼は小さな自尊
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