ら》をつき出《だ》し、踵《かかと》で調子《ちょうし》をとりながら、部屋《へや》の中をぐるぐるまわっていた。自分で作《つく》った歌《うた》をやってみながら、気持《きもち》が悪《わる》くなるほどいつまでもまわっていた。祖父《そふ》はひげをそっていたが、その手《て》をやすめて、しゃぼんだらけな顔をつき出《だ》し、彼の方を眺《なが》めていった。
「何《なに》を歌ってるんだい。」
クリストフは知《し》らないと答えた。
「もう一|度《ど》やってごらん。」と祖父《そふ》はいった。
クリストフはやってみた。だが、どうしてもさっきの節《ふし》が思い出せなかった。でも、祖父《そふ》から注意《ちゅうい》されてるのに得意《とくい》になり、自分のいい声をほめてもらおうと思って、オペラのむずかしい節《ふし》を自己流《じこりゅう》にうたった。しかし祖父《そふ》が聞《き》きたいと思ってるのは、そんなものではなかった。祖父《そふ》は口をつぐんで、もうクリストフに取りあわない風《ふう》をした。それでもやはり、子供《こども》が隣《となり》の部屋《へや》で遊んでいる間、部屋《へや》の戸を半分《はんぶん》開放《あけはな》し
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