《えら》い音楽家《おんがくか》になりたくて、人にほめられたくて、書いたんだ。お前は高慢《こうまん》だった、お前は嘘《うそ》つきだった、それで罰《ばつ》をうけた……そこだ。音楽では、高慢《こうまん》になって嘘《うそ》をつけば、きっと罰《ばち》があたる。音楽は謙遜《けんそん》で誠実《せいじつ》でなくてはならない。そうでなかったら、音楽《おんがく》というのは何《なん》だ? 神様に対する不信《ふしん》だ、神様をけがすことだ、正直《しょうじき》な真実《しんじつ》なことを語《かた》るために、われわれに美しい歌を下さった神様をね。」
彼はクリストフが悲《かな》しがってるのに気がついて、抱《だ》いてやろうとした。しかしクリストフは怒《おこ》って横を向いた。そして彼は幾日《いくにち》も不機嫌《ふきげん》だった。小父《おじ》を憎《にく》んでいた。――けれども、「あいつはばかだ、なんにも知るもんか! ずっと賢《かしこ》いお祖父《じい》さんが、僕の音楽をすてきだといってくれてるんだ。」といくら自分でくり返《かえ》してみてもだめだった。心の底《そこ》では、小父の方《ほう》が正《ただ》しいとわかっていた。ゴット
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