失《うしな》って、答える言葉《ことば》もなかった。ゴットフリートは憐《あわ》れむようにいった。
「どうしてそんなものを作《つく》ったんだい。どうにもまずい。誰《だれ》もそんなものを作れとはいわなかったろうにね。」
 クリストフは怒《おこ》って赤くなり、いいさからった。
「お祖父《じい》さんは僕の音楽《おんがく》をたいへんいいといってるよ。」と彼は叫《さけ》んだ。
「そう!」とゴットフリートは平気《へいき》でいった。「お祖父《じい》さんのいうことが本当《ほんとう》なんだろう。あの人はたいへん学者《がくしゃ》だ。音楽のことは何《なん》でも知っている。ところがおれは、音楽のことはあまり知らないんだ。」
 そして少し間《ま》をおいていった。
「だが、おれは、たいへんまずいと思うよ。」
 彼《かれ》はおだやかにクリストフを眺《なが》め、その不機嫌《ふきげん》な顔を見て、微笑《ほほえ》んでいった。
「何《なに》かほかに作《つく》ったのがあるかい? 今のより外《ほか》のものの方が、おれの気《き》にいるかも知れない。」
 クリストフはほかの歌《うた》が小父《おじ》の感じをかえてくれるかも知れないと思っ
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