「そうだよ。」とクリストフは得意《とくい》げに答えた。
彼はゴットフリートがほめてくれるだろうと思っていた。しかしゴットフリートはきき返した。
「何《なん》のためにだい?」
クリストフはまごついた。そして、ちょっと考《かんが》えてからいった。
「立派《りっぱ》な歌をつくるためだよ。」
ゴットフリートはまた笑《わら》った。そしていった。
「偉《えら》い人になるために歌《うた》をつくりたいんだね。そして、歌をつくるために偉い人になりたいんだね。それじゃあ、尻尾《しっぽ》を追《お》っかけてぐるぐるまわってる犬《いぬ》みたいだ。」
クリストフはひどく気《き》にさわった。ほかの時だったら、いつもばかにしている小父《おじ》からあべこべにばかにされるなんて、我慢《がまん》が出来なかったかもしれない。それにまた理窟《りくつ》で自分をやりこめるほどゴットフリートが利口《りこう》だなどとは、思いもよらないことだった。彼《かれ》はやり返してやる議論《ぎろん》か悪口《あっこう》を考えたが、思いあたらなかった。ゴットフリートは続《つづ》けていった。
「もしお前が、ここからコブレンツまであるほど大きな人物
前へ
次へ
全39ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング