え》のことを思う時のもある。自分がいやしい罪人《つみびと》だったからといって、まるで虫《むし》けら[#「けら」に傍点]みたいなものだったからといって、自分《じぶん》の身がつくづくいやになった時のもある。ほかの人が親切《しんせつ》にしてくれなかったからといって、泣《な》きたくなった時のもある。天気がよくて、いつも親切に笑《わら》いかけて下さる神様《かみさま》のような大空《おおぞら》が見えるからといって、楽しくなった時のもある。……どんなのでも、どんなのでもあるんだよ。何《なん》でほかのをつくる必要《ひつよう》があるものか。」
「偉《えら》い人になるためにさ……」と子供《こども》はいった。彼の頭は、祖父《そふ》の教《おしえ》と子供らしい夢《ゆめ》とで一ぱいになっていた。
ゴットフリートは穏《おだや》かに笑《わら》った。クリストフは少しむっ[#「むっ」に傍点]として尋《たず》ねた。
「なぜ笑《わら》うんだい!」
ゴットフリートはいった。
「ああ、おれは、おれはつまらない人間さ。」
そして子供《こども》の頭をやさしく撫《な》でながらきいた。
「お前は、偉《えら》い人になりたいんだね?」
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