、歌わなくちゃならない時に、歌うものなんだ。面白半分《おもしろはんぶん》に歌っちゃいけない。」
「でも、音楽《おんがく》をつくる時はどうなの?」
「これは音楽じゃないよ。」
 子供《こども》は考えこんだ。よくわからなかった。けれど説明《せつめい》してもらわなくてもよかった。なるほど、それは音楽《おんがく》ではなかった。普通《ふつう》の歌みたいに音楽ではなかった。彼はいった。
「小父《おじ》さん、小父さんはつくったことある?」
「何をさ。」
「歌を。」
「歌? どうして歌をつくるのさ。歌はつくるものじゃないよ。」
 子供《こども》はいつもの論法《ろんぽう》でいいはった。
「でも、小父《おじ》さん、一|度《ど》は誰《だれ》かがつくったにちがいないよ。」
 ゴットフリートは頑《がん》として頭を振《ふ》った。
「いつでもあったんだ。」
 子供はいい進《すす》んだ。
「だって、小父《おじ》さん、ほかの歌を、新しい歌を、つくることは出来《でき》るんじゃないか。」
「なぜつくるんだ。もうどんなのでもあるんだ。悲《かな》しい時のもあれば、嬉《うれ》しい時のもある。疲《つか》れた時のもあれば、遠い家《い
前へ 次へ
全39ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング