った。
「小父《おじ》さん!」とクリストフはくりかえして、両手と顎《あご》を彼の膝《ひざ》にのせた。
ゴットフリートはやさしい声でいった。
「何《なん》だい……」
「それ何《なん》なの、小父《おじ》さん。教《おし》えてよ。小父さんが歌ったのなあに?」
「知らないね。」
「何《なん》だか教えとくれよ。」
「知らないよ。歌だよ。」
「小父《おじ》さんの歌かい。」
「おれのなもんか、ばかな……古い歌だよ。」
「誰《だれ》がつくったの?」
「わからないね。」
「いつ出来たの?」
「わからないね。」
「小父《おじ》さんの小さい時分《じぶん》にかい?」
「おれが生《う》まれる前《まえ》だ。おれのお父《とう》さんが生まれる前、お父さんのお父さんが生まれる前、お父さんのお父さんのそのまたお父さんが生まれる前だ……。この歌《うた》はいつでもあったんだよ。」
「変《へん》だね! 誰《だれ》にもそんなこと聞いたことがないよ。」
彼《かれ》はちょっと考えた。
「小父《おじ》さん、まだほかのを知ってる?」
「ああ。」
「もう一つ歌って。」
「なぜもう一つ歌うんだい? 一つで沢山《たくさん》だよ。歌いたい時に
前へ
次へ
全39ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング