り》きりでほかに身寄《みより》の者《もの》もなかった。二人《ふたり》とも生活のためにひどく苦労《くろう》して、やつれはてていた。人知《ひとし》れず忍《しの》んできた同じような苦《くる》しみとお互《たがい》の憐《あわ》れみの気持《きもち》とが、悲しいやさしみをもって二人を結《むす》びつけていた。生《い》きるように、楽しく生きるように頑固《がんこ》に出来上ってる、丈夫《じょうぶ》な騒々《そうぞう》しい荒《あら》っぽいクラフト家《け》の人たちの間にあって、いわば人生の外側《そとがわ》か端《はし》っこにうち捨てられてるこの弱い善良《ぜんりょう》な二人《ふたり》は、今までお互に一|言《こと》も口には出《だ》さなかったが、互《たがい》に理解《りかい》しあい憐《あわ》れみあっていた。
クリストフは子供《こども》によく見られる思いやりのない軽率《けいそつ》さで、父や祖父《そふ》の真似《まね》をして、この小さい行商人《ぎょうしょうにん》をばかにしていた。おかしな玩具《がんぐ》かなんかのように彼を面白がったり、悪《わる》ふざけをしてからかったりした。それを小父《おじ》([#ここから割り注]小さい行商人[
前へ
次へ
全39ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング