薬類など、いろんなもののはいってる大きな梱《こり》を背負《せお》って、村から村へと渡《わた》り歩《ある》いていた。家の人たちは何度《なんど》も、雑貨屋《ざっかや》や小間物屋《こまものや》などの小さな店を買《か》ってやって、そこにおちつくようにすすめたことがあった。しかし彼《かれ》は腰《こし》をすえることが出来なかった。夜中《よなか》に起上《おきあが》って、戸の下に鍵《かぎ》をおき、梱《こり》をかついで出ていってしまうのだった。そして幾月《いくつき》も姿《すがた》を見せなかった。それからまた戻《もど》ってきた。夕方《ゆうがた》、誰かが戸にさわる音《おと》がする。そして戸が少しあいて、行儀《ぎょうぎ》よく帽子《ぼうし》をとった小さな禿頭《はげあたま》が、人のいい目つきとおずおずした微笑《びしょう》と共にあらわれるのだった。「皆さん、今晩は。」と彼《かれ》はいった。はいる前によく靴《くつ》をふき、みんなに一人一人《ひとりひとり》年《とし》の順に挨拶《あいさつ》をし、それから部屋《へや》のいちばん末座《まつざ》にいって坐った。そこで彼はパイプに火をつけ、背《せ》をかがめて、いつものひどい悪洒落
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