きよ》せた。クリストフはその膝《ひざ》に身体《からだ》を投《な》げかけ、その胸《むね》に顔をかくした。彼は嬉《うれ》しくて真赤《まっか》になっていた。老人《ろうじん》は子供よりもっと嬉《うれ》しかったが、わざと平気《へいき》な声で――感動《かんどう》しかかってることに自分《じぶん》でも気づいていたから――いった。
「もちろん、お祖父《じい》さんが伴奏《ばんそう》をつけたし、また歌の調子《ちょうし》に和声《ハーモニー》を入れておいた。それから……(彼は咳《せき》をした)……それから、三拍子曲《ミニュエット》に中間奏部《トリオ》をそえた。なぜって……なぜって、そういう習慣《しゅうかん》だからね。それに……とにかく、悪くなったとは思《おも》わないよ。」
 老人はその曲《きょく》を弾《ひ》いた。――クリストフは祖父《そふ》と一しょに作曲《さっきょく》したことが、ひどく得意《とくい》だった。
「でも、お祖父《じい》さん、お祖父さんの名前《なまえ》も入れなきゃいけないよ。」
「それには及ばないさ。お前《まえ》よりほかの人に知らせる必要《ひつよう》はない。ただ……(ここで彼の声はふるえた)……ただ、
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