かしながら、クリストフにその楽譜《がくふ》を説明《せつめい》してやった。
「これは詠唱曲《アリア》だ。火曜日《かようび》にお前が床にねころんでうたっていたあれだ。それから、行進曲《マーチ》。先週《せんしゅう》だったね、もう一度やってごらんといっても、思《おも》いだせなかったろう、あれだ。それから三拍子曲《ミニュエット》。肱掛椅子《ひじかけいす》の前で踊っていた時の歌だ。……みてごらん。」
表紙には、見事な花文字《はなもじ》で、こう書いてあった。
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少年時代の快楽《かいらく》――詠唱曲《アリア》、三拍子曲《ミニュエット》、円舞曲《ワルツ》、行進曲《マーチ》。ジャン・クリストフ・クラフト作品《さくひん》※[#ローマ数字1、1−13−21]。
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クリストフは目《め》がくらむような気がした。自分《じぶん》の名前、立派《りっぱ》な表題《ひょうだい》、大きな帖面《ちょうめん》、自分の作品《さくひん》! これがそうなんだ。……彼はまだよく口がきけなかった。
「ああ、お祖父《じい》さん! お祖父《じい》さん!……」
老人《ろうじん》は彼を引寄《ひ
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