だり雑談をしたりした。しかしオリヴィエは、精神の規律や仕事の几帳面《きちょうめん》さや細心に倹約された時間などという伝統的な習慣のために、中流人的な本能のために、不快の念を覚えさせられた。そんなに多くの時間を空費したくなかった。そのうえ彼は雑談をすることも酒を飲むこともできなかった。それからまた、肉体上の窮屈さ、異なった人間の身体をたがいに引き離すひそかな反感、魂の交流に対抗する官能の敵対、心に反発する肉体、などがあった。オリヴィエはクリストフと二人きりのときには、民衆と親密にすべき義務を、感動しながらクリストフへ話すのであった。しかし民衆の面前に出ると、それを少しも実行できなかった。彼の観念をあざけってるクリストフが、往来で出会う労働者のだれとでも訳なく親密になれるに反し、オリヴィエのほうは、それらの人々と隔たってる自分自身を感じてほんとうに苦しんだ。彼は彼らと同様になろうとつとめ、彼らと同様に考えようとつとめ、彼らと同様に口をきこうとつとめた。しかしそれができなかった。彼の声は鈍くて曇って、彼らの声のようには響かなかった。彼らの表現のあるものを真似《まね》ようとすると、その言葉が喉
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