……。」
しかし相手はそのノヴァリスの言葉を理解しなかった。
――この男は空《から》っぽになったのだ。と彼は考えた。
クリストフは理解されようとはつとめなかった。
二人の客が辞し去るとき、彼は少し送っていって、山の景色を見せてやった。しかし遠くまでは行かなかった。牧場を見渡しながら、音楽批評家はパリーの劇場の舞台装飾を話しだした。そして画家のほうは、色調のことを言いだして、色彩の配列がよくないことを容赦なく指摘し、これはスイス趣味であり、ホドラー流の生硬《せいこう》平凡な雑色だとした。そのうえ彼は自然にたいしては、全然|衒《てら》うのでもない冷淡さを高言していた。自然を知らないふうをしていた。
「自然とは、いったいなんだろう? 僕にはわからない。光と色、なるほど結構なものさ。自然なんか、僕は意に介しない……。」
クリストフは彼らと握手をかわして、立ち去るままに任した。それくらいのことにはもう平気だった。彼らは谷の向こうにいるのだった。それでよいのだった。彼はだれにもこう言いはしなかった。
「僕のところまで来るには、僕と同じ道を取りたまえ。」
数か月間彼を燃えたたしていた創造
前へ
次へ
全367ページ中364ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング