情な創造主[#「創造主」に傍点]ではなかった。みずから火を放った都市の火災を青銅の塔の上からながめてるネロ皇帝ではなかった。神は苦しんでいた。神は戦っていた。すべての戦う人々とともに戦い、すべての苦しむ人々のために苦しんでいた。なぜなれば、神は生[#「生」に傍点]であり、闇の中に落ちてる一点の光明であった。その光明は広がって、闇夜をものみつくそうとする。しかし闇夜は無際限である。そして神の戦いはけっしてやむことがない。結果がどうなるかはだれにもわからない。それは勇壮なる交響曲[#「交響曲」に傍点]であって、たがいに衝突し入り乱れる不協和音までが、一つの清朗な協奏をなしている。静寂のうちに奮闘してる※[#「木+無」、第3水準1−86−12]《ぶな》の森のように、生[#「生」に傍点]は永遠の平和のうちに戦っている。
その戦いと平和とが、クリストフのうちに鳴り響いた。彼は大洋の音を響かす貝殻《かいがら》に似ていた。主権的な律動《リズム》に導かれてる、らっぱの呼び声、音響の颶風《ぐふう》、英雄詩的喚声が、通りすぎていった。なぜなら、彼の朗々たる魂の中ではすべてが音響に変化した。その魂は光明を
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