てる戦いに気づいたのだった。そして彼の心は憐憫《れんびん》と嫌悪《けんお》とに満たされた。彼は幸福だったときでさえも、常に動物を愛していた。動物にたいする残虐を忍び得なかった。狩猟にたいして嫌忌の念を覚えた。人に笑われはすまいかと思って、それをあえて口には出さなかったし、またおそらく自分自身でも、はっきり是認し得なかったかもしれない。しかしその嫌悪の念こそ、彼がある種の人々にたいしていだいてる反感の、ひそかな原因だったのである。娯楽のために動物を殺すような者を、彼はかつて友として受けいれ得なかったであろう。それは少しも感傷性ではなかった。人生は苦悶《くもん》と残忍との無限な総和の上に立ってることを、彼はだれよりもよく知っていた。人は他を苦しめずには生きてゆけない。眼をつぶったり言葉でごまかしたりすべきではない。人生を捨つべきだと結論したり子供のようにめそめそ泣いたりすべきではない。否、当分他に生きる方法がないとするならば、生きんがためには殺してさしつかえない。しかしながら、殺さんがために殺す者は悪人である。無意識的ではあるが、でも悪人たるに変わりはない。人間の不断の努力は、苦しみと残虐
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